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味覚以外で、どこまでおいしくなるのか?

食の質は向上し、味が解明され、いつでも・どこでもおいしい食べ物が手に入るようになった現代。しかしその反面、均一化されたおいしさで溢れてしまった。ゆえに食べることの喜びや価値は変化した。味覚以外の情報で、おいしさの個性を引き出せないか。

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THINK HUMAN EXHIBITIONにおける「食」プロジェクトチームの展示は、食べ物への感じ方が情報によって変化する実験そのものを観覧者が体験できるものだった。フードアナリストであり、食育のプロフェッショナルのとけいじ千絵さんが監修した、100年後に「食べているかもしれない」不思議な食べ物。今までに食べたことも匂いを嗅いだこともない、白く四角い「食べ物」が、さまざまな情報とともに透明なアクリルボックスの中に提示された。


「情報」によって、食への感じ方が変わる。

食べ物がただそこに置かれ、どんな食べ物なのかもまったく知らない場合に、食べてみたいと感じるのかどうか?展示された数々のアクリルボックスにはさまざまな情報とともにその「白く四角い食べ物」が置かれている。例えば「色」というボックスでは上質な赤い布の上に置かれ、「大量生産」ではピラミッドのように「食べ物」が積まれ、「音楽」ではヘッドホンからクラシックが流れてくる。作られた環境の情報によって、観覧者は自分がその「白い四角い食べ物」に対する感覚が変化していることに気づく。「洋風」、「中華風」、「和風」、「イタリアン」とそれぞれのスタイルでセッティングされた皿の上に置かれるだけで、無味無臭だった「白く四角い食べ物」への想像する味が変化していく。

『食の情報解剖』と題し、味覚以外の食にまつわる情報を細分化し、一覧で展示した。

さらに展示ブースの中央には、東京大学廣瀬通孝教授の研究室で考案された「Calibra Table」が置かれた。

Calibrateとは、較正するという意味だが、そこでは食べ物が置かれた画像の皿が、大きくなったり小さくなったり変化する。すると、観覧者はその食べ物の量が減ったり増えたりするように感じられる。小さな皿に乗せた場合には食べ物が大きく見えるため、食べる量が減るのが一般的な実験結果だという。これもまた、情報によって変化する「食べる」という行為の不思議である。

ブース内で展示した「味覚以外でどこまでおいしくなるのか?」を実験・検証した映像。


100年後の未来でも、我々は、食べているか?

とけいじさん、廣瀬教授を交えたトークセッションは、「コモディティ化する食」というテーマを皮切りに、食と情報についての意見が交換された。そこで大きなキーワードとなったのが、廣瀬教授による「人はコンテクストの動物」という言葉だった。廣瀬教授は言う。

「冷えた天ぷらであっても、周りに油で揚げる環境を疑似的に再現すれば、美味しく食べられる、という実験を学生がしたことがあります。つまり、人はコンテクストによって味覚さえ変化してしまうんですね。たとえば100年後の未来において、カプセルを飲めば必要な栄養は摂取できる場合に、我々は「食べる」という行為をしているのかどうか。今までは必要に迫られて食べていたけれど、そこから解放された時にどうするのか。私は、『未来は、意志』だと思っていますが、食の分野においても同じことが言える。私たちはまだ食べたいと思っているのかどうか」

この廣瀬教授の発言を受けて、食育を主な研究分野としているとけいじさんは、「食を楽しむ感性」の重要性を再確認していた。

「私が考える食育は、何を食べれば、どんな栄養素を摂取できるのかという栄養学のようなものではなくて、いかに食べ物ときちんと向き合うかというものです。食べ物に対してきちんと意識を向ければ、それだけキャッチできる情報も増えるはず。それは廣瀬先生が先ほどおっしゃった『未来は、意志』という考え方と同じで、食べる行為そのものへの意志をきちんと持てるかどうかが未来においてとても重要なのだと思います。その意志を持つことで、食を楽しむ感性は養われていくのだと思います」

つまり、未来の食の豊かさは、人の意志に委ねられているのだろう。たとえコモディティ化が加速し、孤食をはじめとする様々な「食」の問題が顕在化したとしても、多様な「情報」という切り口によって解決の糸口をたどることができるかもしれない。そして帝人はこれからも未来の食生活を創造する歩みを、止めてはならない。人が生きていく上で欠かすことのできない食とどう向き合っていくのか。その問いかけは、人の生き方そのものへの問いかけに等しいと言えるからだ。

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