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味覚以外で、どこまでおいしくなるのか?

食の質は向上し、味が解明され、いつでも・どこでもおいしい食べ物が手に入るようになった現代。しかしその反面、均一化されたおいしさで溢れてしまった。ゆえに食べることの喜びや価値は変化した。味覚以外の情報で、おいしさの個性を引き出せないか。

コモディティ化する食 情報によって味付けする未来へ

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最新の国連予想では、世界人口は、現在の76億人から2050年には98億人へ達すると言われている。食料生産量を増やさなければいけない状況にも関わらず、経済発展によって都市化が進み、農地面積は減少する可能性が高い。アジアをはじめとした新興国の経済発展が続き、各国の経済が豊かになるに従って、かつての我が国がそうであったように、穀物中心の食生活から肉や魚などの欧米的な食生活へと変化していくことが予想される。農作地が減少する一方で、需要が膨らむ畜産物を育てるのには当然穀物が必要になる。いま現在すでに8億人近い人々が十分な食料を得られていないと言われているが、さらに20億以上も増えるだろう人口を、どうやって賄っていくのだろう。


少しずつ自然から離れ
食は均質化されていく。

近未来において、人類は確実に、切実な食料問題に直面する。そこで想像されるいくつかの対策の一つが、人工食品の生産技術の“確立”だ。効率よく体内に栄養素を取り込み、タンパク質を合成し、脂質を組み合わせ、ビタミンを補給するためのツールこそが必要となる。例えば、一つの解決策として期待されているのが培養肉。家畜の幹細胞を培養液に浸して、“肉”へと成長させる牛肉のことを「カルチャード・ビーフ」と呼ぶ。

どのような地域にも工場を設置できることから、均質な食材の供給が可能となるメリットも大きい。すでに栽培が広くおこなわれている遺伝子組み換え作物とはまったく違うロジックで生産されるものだが、目的は同じ増産と経済性。また革新的な保存技術の向上によって、食糧供給の問題解決のみならず、食糧廃棄の問題も解決できるだろう。いずれにしろ、未来の食は、少しずつ自然から離れていく。すると、テクノロジーの進化によって、栄養摂取という点がクリアされたとしても、どこでも誰もが同じような食を摂取する状況になることで、食に対する喜びといった感情は、より個人の趣向や健康状態に適したものに移行していくことが予想される。つまり、より“食”は均質化され、コモディティ化されていくのだ。


舌だけで味わうのではなく
目でも耳でも味わっている。

現在、すでに加工食品の摂取量が増えており、農業、畜産業の大規模化によって、食の画一化は始まっている。多くの世界チェーンが、「どこに行っても同じものを食べられる」というクオリティの担保を謳っているが、それは同時に「どこに行っても同じ味」という画一化に過ぎないとも言えるだろうか。

こうやって管理された食に、人は喜びを見出せるだろうか。

一つの解決策が、「情報による味覚のプラシーボ効果」だ。食料危機の時代が避けられず、そして大量生産されたものを摂取するしかない状況において、食を彩るのは、“情報”かもしれない。過去に行われた、こんな実験がある。並べたビールにラベルがなかった場合に、味をランク付けすることができるのか。多くの被験者は、銘柄の違うビールを区別することができなかったという。また別の実験では、水道水をペットボトルに入れてラベルをつけ、味をテストした場合には臭みが少なく甘みが多いと判断されたという。人間は、舌だけで食事を味わっているわけではない。視覚、嗅覚、あるいは触覚や聴覚、あるいは食品に関する事前の情報で、味は変わるのだ。

THINK HUMAN PROJECTメンバーの坂本和紀は、将来起こりうる食糧問題について、このように語る。

「私たちのプロジェクトでは、未来の食における課題そのものを解決するというアプローチではなく、そうした状況の中で、人々の食体験をいかに豊かにできるか、そういったポイントにおいて新たな糸口を見つけたいと考えています。注目しているのが、情報による味覚の誘導です。人間は舌だけで食事を味わっているわけではない。味覚と情報との相関性を分析しながら、食に対する喜びを向上させる付加価値を見つけていけたらと思っています。さらにいうならば、人口増加とともに、高齢者が増加する傾向がより顕著になっていきます。加齢による味覚の変化(唾液の減少、嗅覚の衰えなど)を補うことも、五感を刺激する情報で可能になるかもしれないと考えているのです」

ではいったい、どのような“情報”が、私たちの食事を豊かにするのだろうか。次回以降、いくつかの実験を通してその核心へ迫っていく。

参考資料:
『世界の食料不安の現状』 2015年度版(国連食糧農業機関)

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