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空間は、健康をつくれるのか?

身体中のあらゆる細胞の中に存在し、健康を左右すると言われている体内時計。現在の都市空間において、明るすぎる光や自然のサイクルとかけ離れた生活リズムなどの影響により、その機能が大きく乱されている。空間により乱された体内時計は、空間により整えることはできるのか。

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体内時計の乱れを正し、ソーシャル・ジェットラグのリスクを軽減させる住空間を作れないか。「住空間と体内時計のより良いあり方」を探るべく、今回は睡眠医科学を専門とする、国立大学法人筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)機構長/教授の柳沢正史さんにインタビューを行った。体内時計を正しく理解できれば、QOL=Quality of lifeを向上させる未来の住空間のヒントを見つけることができるはずだ。

「私たちは人生のおよそ1/3を睡眠に費やしているにも関わらず、なぜ睡眠が必要なのか、また、『眠気』の実体とは何なのか、それらは未だ謎のままなんです」
そう話すのは、睡眠医科学研究のパイオニアで、全米トップレベルと謳われるテキサス大学サウスウエスタン医学センターで20年以上も教授・主任研究者として活躍してきた柳沢正史さん。現在は国立大学法人筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)にて、睡眠と覚醒の本質を解き明かすべく、神経科学、創薬化学、実験医学と幅広い領域で研究活動を行なっている。

大きな謎を秘める睡眠と、体内時計の関係

柳沢さんによれば、睡眠をコントロールする因子の主要なものが、体内時計とホメオスタシス(恒常性維持機構)だ。例えば、時差ボケによる睡眠への影響は体内時計が、徹夜明けに感じる強い眠気はホメオスタシスによる調節が関係している。この2つの因子が互いに影響しあって、睡眠と覚醒に一定のリズムが保たれている。加えて、興奮して眠気を忘れたり、退屈なときついうとうとしてしまったりといった、情動にも影響を受ける。

「体内時計は睡眠をコントロールする非常に重要な因子ですが、その体内時計を最も強力に調節する外的要因が光です。朝のある特定の時間に浴びる光は時計を進め、逆に晩の時間帯に浴びる光は時計を遅らせることがわかっています。眼の網膜に、映像とは別に明るさを感じる専用のセンサーがあり、脳内の視床下部にある神経細胞がその情報をキャッチし、体内時計を調節するのです。これは自然光に限らず、ある一定の照度を持った光であれば作用します」

このシステムをうまく利用すれば体内時計をチューニングすることも可能だ。時差ぼけなどで「朝日を浴びろ」と言われるのはこのためである。ただしチューニングできる時差は、1日でせいぜい1、2時間ほど。10時間の時差を修正するのには1、2週間かかるという。

「体内時計とは別に、光そのものにも覚醒作用があります。また、眠りを誘うホルモンとして知られるメラトニンの分泌も、体内時計によるコントロールとは別に光で抑制されることがわかっています。ですから、睡眠環境を整えるには光を遮断することが大切です。明かりを付けっぱなしで寝ないで、寝室には遮光性のカーテンをつけるなど、部屋を暗くしましょう」


眠れない街、東京。問題は住空間の照明だった

シフトワークに夜型生活。日本の都市部に暮らす働き世代のほとんどが睡眠不足といわれ、日本人の平均睡眠時間は先進国で最下位。ただでさえ現代的な生活環境は体内時計を遅らせがちである。次の100年を見据え、体内時計を整え、健やかな睡眠をかなえるためには何が必要なのだろう。

「2017年にサーカディアン・リズムを生み出す遺伝子の研究がノーベル生理学・医学賞を受賞したことで、体内時計への意識は飛躍的に高まったように思います。生活習慣はすぐに変えられないにしても、体内時計を意識するだけでも睡眠環境を改善できるのではないでしょうか。

これからの住空間を考える上では、パソコンやテレビ、スマホなどが発するブルーライトだけでなく、むしろ居住空間そのものの照明の影響が大きいことを考慮すべきです。体内時計は、網膜にあるセンサーがキャッチする光の総量に反応しますから、暗い部屋で見るスマホよりも、夜間に蛍光灯やLEDで煌々と照らされた部屋にいる方が体内時計を狂わせるのです。特に日本の住宅は欧米に比べて居住空間の夜間照明が極端に明るい。間接照明をうまく取り入れて光量を落とすなど、体内時計を整える部屋作りを心がけたいものです」

「部屋を明るくするための照明」から、「健康を作る・保つための照明」へ。そんな柳沢さんの提言を受け、帝人が考えたのは「体内時計を整える照明」を取り入れた空間だ。次回、光と壁を効果的に使った未来型住空間を紹介しよう。

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