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人は、捨てないで生きていけるのか?

これまで大量生産、大量消費、大量廃棄を、繰り返して進化してきた現代社会。
この一方通行型の経済社会は変えられないのか。
これからの社会には、自然の生態系サイクルのような捨てるという概念がない、資源が循環しつづける「サーキュラーエコノミー」の発想を。

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大量生産、大量消費、大量廃棄に大きく依存している現代社会を省みるため、THINK HUMAN EXHIBITIONでの「環境」プロジェクトチームは、「捨てる」ということに対して違う視点をいかに持ち込み、環境への意識をいかにチェンジできるかを問う展示を行った。一方通行型の経済社会に歯止めをかけ、サステイナブルな社会へ移行するために、明日から私たちに何ができるのだろうか、と。

ものごとの見方を変えれば、新しい価値観が生まれる

THINK HUMAN EXHIBITIONでは、「環境」プロジェクトチームがサポートする二つの実験のプレゼンテーションを行った。南極と大西洋という全く異なるフィールドで展開されたプロジェクトでは、それぞれに関わる全ての人が「人は、捨てないで生きていけるのか」という課題を意識し、共通の目標を持って取り組んだ。

まずは大西洋でのプロジェクトでは、21名の学生が帆船に乗り込み、過酷な気象条件の中、三週間に渡って大西洋を航海しながら、「2050年、資源が循環し続ける『サーキュラー・エコノミー社会』のリーダーになるために、私たちはどう進化すべきか」というテーマのディスカッションを続けた。一方の南極のプロジェクトでは、現在進行中の「Clean 2 Antarctica」プロジェクトの一環として、エドウィン・ター・ヴェルデと妻のリースベットが廃棄素材で作られた探査機に乗り込み、南極点に向かっているところである。

どちらの実験でも環境問題の具体的なソリューションを得られるには至っていないが、グローバルな問題を解くための手がかりを得ることができた。旧来の考え方の土台そのものを、未来を見据えて改めることが、新時代の「マインドセット」に結びついていく。エキシビション当日のトークセッションでは、「バックキャスト」思考という新しい視点でサステイナブルな暮らし方を提唱する、東北大学名誉教授の石田秀輝教授と、「環境」プロジェクトチームを統括するトン・デ・ウェイヤーが、私たちはどう環境問題へ取り組むべきかを考察した。

工業立国の日本において環境に配慮したテクノロジーのあり様を探り、「ネイチャー・テクノロジー」という新しい概念を提唱する石田教授は現在、沖永良部島に拠点を移し、「ネイチャー・テクノロジー」よりさらに上位の概念である「間抜けの研究」を進めているという。先生曰く、テクノロジー、サービス、あらゆるビジネスにおいて今後求められるのは、これまでとは足場を変えた新しい視点である。地球環境という厳しい制約の中で、いかに心豊かな暮らしを実現するか。これまで通りの視点で未来を予測し、行動計画を立てる「フォアキャスト」型の思考ではなく、制約の多い現状からワクワクドキドキできる持続可能な社会の姿を描く「バックキャスト」の思考が必要なのだ、と。

「厳しい制約をベースに、その上に心豊かな暮らし方を描いた時、快適さや利便性を重視した依存型の社会から脱却した、自立的なライフスタイルが見えてきます。そこには全く新しいテクノロジーやサービスが生じているはずです。私が提唱する『ネイチャー・テクノロジー』では、まず、描いたライフスタイルに必要なテクノロジー要素を抽出し、それを自然の中に探しに行きます。そこで見つけた要素をサステイナブルというフィルターを通してリデザインするのです」

そこから生まれたのは、例えば入浴の機会を制約することなくエネルギーも水も節約できる未来型の泡のお風呂や、トンボに学ぶ、微風でもエネルギーを得られる風力発電など、ライフスタイル・オリエンテッドなテクノロジーだ。

「いまの足場を変えてものごとを考えてみると、見える世界が変わってきます。私は現在、沖永良部島で自足をつむぎ直すというプロジェクトに取り組んでいます。教育、食べ物、エネルギー、お金を自足する。すると何が見えてくるのか。お金が、仕事が生み出され、笑顔が増え、結果、QOL(=Quality of life)が向上し、島の人口が増える。そういうローカルの方程式を作りたいと考えているのですが、こうした思考のプロセスもこれからの新しい価値になるのではないでしょうか」

「環境」プロジェクトのブースの展示では“IMAGE FUTURE”と型抜かれたポストカードを配布。廃棄物をもとに作られた探査機で南極大陸を横断する「Clean 2 Antarctica」の冒険を通して伝えたいのは、すべての行動は新しいマインドセットが第一歩であるということだ。視点を変え、新たな物事の捉え方で未来をイメージしてほしいというメッセージが込められている。


新たなマインドセットがもたらすもの

トンを含め、「環境」プロジェクトチームの考え方の土台になっているのは、このような「新たな視点が生み出す新しい価値」である。エドウィンの「C2A」も、「ゴミは廃棄されるものではなく、新たな資源」という、全く新しい視点から生まれたものだ。

「これがまさに私たちが考える『EVOLVE+』です。みんなが考え方を変え、考え方を改めた私たちのアクション一つ一つが集まると社会を動かす大きな影響力となる。初めの一歩は、例えばコンビニでプラスチックバッグをもらわないというような、小さなことでいいんです。遊び心を忘れず、少しだけ不便を受け入れ、一歩を踏み出し、失敗を恐れない勇気を持つ。そんなマインドセットが複雑な環境問題への答えを導いてくれるはずです」(トン)

トークセッションの最後に、南極にいるエドウィンからのビデオメッセージが紹介された。エドウィンは自らの冒険についてこんな風に語っている。

「ゴミは廃棄物ではなく大切な資源であるというマインドセットが、不要なものから新たなものを生み出すという可能性に気づかせてくれました。僕がいま南極大陸にいるのは技術革新の結果ではなく、自分の中の既成概念を打ち破った結果だと思っています。不便や失敗を恐れず、視点を変えて新たな物事に取り組めば、自分自身の成長を得ることだってできるのです」

地球温暖による北極や南極の氷の融解、そして海面上昇。こうしたグローバルな環境問題の解決を他人任せにしていていいのだろうか。私たちはいまこそ、具体的な行動を始めるための方策を見つけなくてはならない。「少しだけ不便を受け入れよう、遊び心を持って行動しよう、勇気を持って飛び出し、そして失敗する勇気を持とう」、これが「環境」プロジェクトチームからのメッセージである。このエキシビションをきっかけに誰かの意識が少しだけ変わり、その結果、行動が変わり、やがてそれが大きなうねりとなる……そんな「EVOLVE+」を、帝人は願っている。

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