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人は、捨てないで生きていけるのか?

これまで大量生産、大量消費、大量廃棄を、繰り返して進化してきた現代社会。
この一方通行型の経済社会は変えられないのか。
これからの社会には、自然の生態系サイクルのような捨てるという概念がない、資源が循環しつづける「サーキュラーエコノミー」の発想を。

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“サーキュラーエコノミー”を推し進める帝人がスタートさせた<EVOLVE+>プロジェクト。持続可能な未来をナビゲートするこのプロジェクトの中心的活動のひとつに、オランダ人冒険家のエドウィン・ター・ヴェルデが率いる「Clean 2 Antarctica」がある。“Zero Waste”をコンセプトに掲げた全く新しいアドベンチャープロジェクトだ。今回はその全貌をお伝えしよう。

僕らはまだゴミを「捨てているじゃないか」
という些細な気づき

エドウィン・ター・ヴェルデはオランダを拠点に活動する冒険家だ。「Clean 2 Antarctica」を始める前は、ビジネスマン兼発明家としていくつかの会社を運営していた。そのエドウィンが全く畑違いの分野で新しいプロジェクトを始めることになったきっかけは、ごく日常的な家庭でのワンシーンだった。

「その日、キッチンで料理をしていた妻がマッシュルームの入っていたプラスチックケースをゴミ箱に捨てていて、その光景を私はぼんやりと眺めていました。どの家庭でも見られるごく当たり前の風景です。ですが、突然、そこに強烈な違和感を覚えたのです。私たち家族は未来のためにサステイナビリティを心がけています。それなのにまだこうしてゴミを捨てているじゃないか、とね」

もし私たちが「捨てる」という行為をやめたとすると、このゴミはどうなるのだろう。ゴミを処分するという方法以外に、何かスマートな解決策はあるのだろうか。家族と話し合ったエドウィンは、“Zero Waste”、つまり「ゴミを出さない」というライフスタイルに挑戦してみることにした。家族であれこれとゴミを出さない工夫を凝らすうち、発明家であるエドウィンは“Zero Waste”に大きな可能性を感じるようになる。

「発明家の視点で、改めてプラスチック廃棄について考えてみました。ゴミにする以外の有用な道はないものか。その結果、簡単に溶かすことができ、違うものに成形できるという特性に、プラスチックの可能性を見出したんです」

プラスチックを溶かしてワイヤーや単繊維を作り出し、その単繊維を材料に、3Dプリンターでさまざまなオブジェを作る。エドウィンは試しに六角形の建物用ブロック「ヘキサコア」を作った。「ヘキサコア」を使えば家や車、船を建造することだって可能かもしれない。

そんなとき、南極を旅した人から「ソーラー発電を使った車で南極地点まで行ってみたい」と言われたことがヒントになり、「Clean 2 Antarctica」プロジェクトを発足させる。

「廃棄プラスチックから作り出した『ヘキサコア』でソーラー発電の探査機を作り、それを南極大陸で走らせることができれば素晴らしいだろう、そう思いました。“Zero Waste”やサステイナビリティへの私の思いを広めることもできるし、廃棄プラスチックについて世界に対して問題提起できます。これは大きなアクションになる」

世界7大陸のうち6つは人間に支配されているが、南極大陸は唯一、自然が支配する場所だ。また、南極大陸は“Zero Waste”が徹底されている。エドウィンはソーラー探査機が目指す大地はここだと確信した。

2018年3月に実施されたアイスランド・レイキャビックでの「Clean 2 Antarctica」のテスト走行の様子とエドウィンをはじめとするメンバーの動画インタビューをお届けする。


ひとつのアクションがいつか大きなうねりとなり、
人々の生活を変えていくだろう

こうしたエドウィンの冒険をサポートしようと、帝人も動き始めている。具体的には、ソーラー発電機に用いられる炭素繊維やポリカーボネート、パラ・アラミド繊維など帝人が開発する化学繊維を提供し、それらを廃棄プラスチックから作り出した素材と組み合わせ、南極の過酷な環境での使用に耐えうるようデザインしたのである。
私たちを取り巻く環境は問題が山積みであるのに、私たちはどうしてそれに対してアクションを起こせないのか。なぜ誰かが解決してくれるのを待っているのか。「Clean 2 Antarctica」には、そういった問題を解決へと導くヒントが隠されている、帝人はそう考えている。個人個人の小さなアクションはやがて大きなうねりとなり、社会を変革する力となる。自宅のキッチンで閃いてスタートしたひとりの冒険家のアクションが、いつか人々の生活を変える大きな力となる、その連鎖こそが<EVOLVE+>なのだ。

「“サーキュラーエコノミー”を促してより良い社会を築きたければ、今までと同じ考え、同じ行動をとっていてはいけない」とエドウィンは言う。

廃棄プラスチックから有用なものを生み出す。一見、不可能なミッションだが、彼は探査機を作ることに成功した。私たちは、新しいことに次々と挑戦し、失敗から学び、そこからサステイナブルでユニークな新しいアイデアやコンセプト、ビジネスの形態を見出さなければならない。未来はそこから始まるのだ。

コラム

Clean 2 Antarcticaが出港
―循環型社会への新たな布石

THINK HUMAN PROJECTの環境チーム<EVOLVE +>では、環境配慮型のソーラーカーで南極点への到達に挑戦する「Clean 2 Antarctica」へのサポートの一環として、学生によるプロジェクト“Quest for Change”を発足。その道のりの一部である、アムステルダムからカナリア諸島までの航路を共にしながら、循環型社会を実現するための新しいアイデア、構想を生み出してもらうことが狙いだ。厳しい課題を成し遂げて選ばれた学生たちは全部で21人。ヨーロッパだけでなく、ブラジルから参加を決めた学生もおり、今プロジェクトに対する世界中からの注目度が伺い知れる。そのうちの一人、フローニンゲン大学の博士課程で学んでいるオランダ出身のマルロス・ファン・デル・フェーンは、この航海で「サステイナビリティというものが、今すぐにでも実現できるものだということを広く知らしめたい」のだという。「もちろん、完璧な形ではないかもしれません。でも、それがすでに可能であるということを、特に大企業に向けて主張していくことができる。それを帝人のような大きな会社が手がけて行うことに、非常に意味があると思うんです」。そんな学生たちの熱い気持ちを乗せた「Clean 2 Antarctica」は、2018年8月27日、アムステルダムより無事に出港。出港式には、学生を激励すべく日本より渡蘭した帝人の代表取締役社長執行役員CEOの鈴木純も駆けつけ、見送る多くの人やメディアと共に、その姿を見守った。

なお、カナリア諸島のテネリフェ島に到着後、「Clean 2 Antarctica」のメンバーはアルゼンチン南部のパタゴニアに向けて航海を続け、12月にはソーラーカーで南極大陸西部のユニオン・グレーシャー・キャンプを出発し、南極点に到達する予定。往復で2,300kmの距離を走破することになる。

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