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人間は、老化をどう迎え入れるのか?

医療やテクノロジーの進化により、健康維持・増進、病気予防が加速している現代。老化メカニズムの解明がさらに進めば、多くの人が寿命を迎えるまで若々しく元気に年齢を重ねることも可能に。老化を恐れない時代は、もうすぐそこに来ているのかもしれない。

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人生100年時代を目前に、私たちはいかに老化を迎え入れればいいのだろうか。本エキシビションでは実際に脳年齢を測定するデモンストレーションと、ワシントン大学(米国セントルイス)医学部発生生物学部門・医学部門の今井眞一郎教授と、大阪大学発の脳波デバイスのベンチャー企業、PGV社最高科学責任者である水谷治央さんをゲストスピーカーに迎えたトークセッションを行い、老化をコントロールできる未来についての考察を発表した。

最期の日まで、肉体的・精神的に充実した人生を送るために

この100年で、人の寿命は40歳代から80歳代へとおよそ2倍に伸び、それに伴いライフスタイルも大きく変化してきている。人生100年時代を前に、最期の日まで健やかでいるためには、どんなことを心がければいいのだろうか。「加齢」プロジェクトチームがこのプロジェクトに携わる中で作り出したのが、生まれた日から最期のときまで、肉体的にも精神的にも高いピークを維持している人生を視覚的に表現した「ライフポテンシャル・カーブ」だ。そしてこれを実現する第一歩として期待されているのが、今井教授が研究するNMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)である。トークセッションは、今井教授によるNMNの説明からスタートした。

「NMNという物質は、私たちの身体の中でNADという物質に変換されて使われます。このNADは細菌からヒトまですべての生物種に備わっている、生きるために必要不可欠な物質なのです。私たちの身体において重要な働きを担っているサーチュインという酵素は私たちの脳の視床下部に働きかけ、老化と寿命を制御していることがわかっています。このサーチュインを活性化させるのがNADですが、NADは加齢に伴い失われてしまうことがわかっています。NADが欠乏するとサーチュインが活性化しなくなり、老化に伴う種々の問題を引き起こします。現在、世界各地で老化研究が進められていますが、そうした研究の中心にあるのがNMNです。NMNを補充することで失ったNADを補い、老化に対抗できないか。その可能性に世界が注目しているのです」

NADを補うために日ごろ、心がけておきたいことがある。適度な運動と規則正しい生活である。

「NMNを作り出す酵素は運動によって増えることがわかっています。また、NADはサーカディアンリズムによってコントロールされているので、体内時計を整えることも重要であると考えられています。NMNは枝豆、アボカド、トマト、ブロッコリーなど一部の野菜やフルーツに含まれており、意識して摂取するといいでしょう。ところで、野菜より多くのNMNを含むのが血液なんです。日本ではスッポンの生き血を飲みますが、研究者の間では、『ドラキュラは血液からNMNを吸い取ってサーチュインを活性化させ、永遠の命を生きているんだ』、なんてジョークが横行しました」(今井)

「加齢」プロジェクトのブースでは来場者の脳年齢を計測し、モニターにてリアルタイムで放映した。年齢と脳機能の能力別のピークの相関図も同時に掲載した。


脳波で脳年齢がわかる?!脳波に秘められた可能性

「老化とどう付き合うか」を考える今回のエキシビションでは、「老化の可視化」もテーマに掲げた。会場ではPGV社が開発した高精度小型脳波センサーを使い、脳波から脳年齢を測定するというデモンストレーションを行なった。この機器でどんなことが可能になるのか、脳波から脳年齢を推定する手法を開発した水谷さんが解説する。

「今井先生からサーカディアンリズムのお話がありましたが、脳波を計測することで生活リズムや睡眠のリズムを視覚化することができます。睡眠には浅いものから深いものまでいくつかのステージがあることが知られていますが、若い被験者と高齢の被験者の脳波を比較してみると、年代による睡眠ステージの違いがわかります。深い眠りは脳に蓄積する老廃物を排出するのに重要だといわれますが、若い被験者は入眠直後に深い眠りがあります。一方、高齢の被験者は深い眠りが少なくなり、覚醒の時間が長く、深い眠りに到達しにくいということがわかります」

ただし、脳機能は加齢により衰える一方というものではないようで、歳を重ねても成熟する機能があるという。例えば集中力は43歳、感情認知能力は48歳ごろ、語彙力にいたっては67歳前後に最も機能が高まると考えられている。

「このように脳波を測定することで、睡眠の推移や生活リズムばかりか、年齢と脳機能の相関性についても少しずつ明らかになってきました。未来の社会では病気予防など、さらにさまざまな用途に活用される可能性があります」(水谷)

さらに今井教授によると、日常のある事柄が老化を遅らせることにつながるかもしれない。彼が2014年から続けている食生活にそのヒントがあるらしい。

「食生活でもっとも重視しているのは、日々のサーカディアンリズムを整えてくれる朝食です。一日の活動期の初めに高いカロリーを摂取すると視床下部の神経細胞がそれを感知、体内時計をリセットしてくれます。私は朝8時ごろに夕食並みのボリュームのある朝食をとり、夕食は夜8時までにワイン一、二杯とフルーツ、チーズなどで簡単に済ませます。すると翌日の朝食までおよそ12時間の絶食状態となりますね。これを間欠的絶食といいますが、間欠的絶食には老化を遅れさせ、寿命を延ばす効果があると考えられています。老化のスピードを遅らせるには、何を食べるかも大事ですが、いつ食べるかを意識することも非常に大切です」(今井)

自らの脳の状態や睡眠リズムを可視化することで、加齢を客観的に判断することができる時代が訪れるかもしれない。現在進められているNMNの臨床実験によりNMNの人間への抗老化作用が実証されれば、自らが老化をコントロールする、そんな未来がやってくるはずだ。加えて、適度な運動、サーカディアンリズムを整える食生活など日常生活にも気を配る。その先に見えてくるのが、今井教授が提唱する「プロダクティブ・エイジング」である。いつまでも個人個人が健康な生活を享受し、そして社会にも貢献できる新しい年齢の重ね方こそ、帝人が目標とする未来のQOL(=Quality of life)である。人生100年時代という長寿社会においてプロダクティブな人生を実現することが、老化とうまく付き合う鍵なのではないだろうか。

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