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「感じる」は、言葉を超えられるのか?

世界は、多様な価値観を受け入れ合う、ポストグローバリズムの時代へ。国・人種・性・世代間のギャップなど、言葉だけでは伝わらなかったものを、感性にフォーカスし、その可能性を探る。

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「感じる」は、言葉を超えられるのか?THINK HUMAN EXHIBITIONでは、人間の五感の中で特に情動との結びつきが強いと言われる「触覚」を用いた実験を展示した。ポストグローバリズムの時代において重要となる、国や人種、性などの差異による隔たりを、「感性」であれば言葉に頼らず越えることができるのではないか。言語によらないコミュニケーションは、人と人をより近付け、理解させることができるという可能性を示すものでもあった。

“心臓”に触れることで伝わる心。

展示では、NTTコミュニケーション科学基礎研究所の渡邊淳司さんが行う「心臓ピクニック」ワークショップで使用されている、聴診器で測定した心音を振動に変換する装置から着想を得て、より「感情」の伝達に特化したシステムを制作した。そのシステムは、事前に撮影された短いドラマの映像にリンクして、主人公の女性の心拍を振動によって伝える。体験者は、各ブースに設置した机上のハート型の“心臓”に両手を置いてドラマを視聴した。

ドラマは、仕事でミスをした女性が急いでタクシーを捕まえようとするところから始まる。ある男性が停めようとしたタクシーに、意図せず先に乗り込もうとして口論になる。しかし、お互いに同じ方向に行くことがわかると、女性はその男性と一緒にタクシーへと乗り込むことになってしまった。激しかった女性の心拍が無言の車内で少し落ち着いていく。PCで写真を確認する男性。彼はカメラマンなのだ。女性はその様子をちらりと目の端に止める。「写真が好きなの?」と男性に聞かれた女性の心拍は、一気に強くなる。それまではタクシーを取り合って、仕方なく同乗している相手であった男性に対して、やがて異なる感情を抱きつつあることが伝わって来る。男性の目的地に先に到着し、車を降りる二人。タクシー運転手から、この先も乗っていくのか尋ねられて、女性は逡巡しながらも、そこで降りることを決意してドラマは終わる。

表面的にはほとんど変化の無い女性も、心拍は激しくなったり、落ち着いたりと、環境が変わるたびに大きな変化を見せる。

「視覚や聴覚が距離のある対象を知覚するための感覚である一方、触覚はモノがそこにあることを直接確かめ、情動反応を強く促す感覚である」そう渡邊さんは言う。

渡邊さんとのトークセッションでは「心臓ピクニック」についても紹介された。無意識でも様々な身体反応を続ける自分の身体は、いわば一番身近な他人。心拍のように自分の意志で完全にはコントロールすることのできないものと共存している。誰の中にも存在する、その意識の下にあるものに対する想像力こそが、「感性」と呼ぶべきものだと、渡邊さんは定義する。

「感性とは、潜在的なものへの感受性だと思うんです。表情の変化はなくとも、心拍は激しく打っていたりしますよね。それは物事の背景にある物語への想像力とも言い換えることができるでしょう。私は触覚を主な研究分野としていますが、言葉ではなく直接触れるからこそ、広がる想像力があるはずです」

心音を体感する感性デバイスの表面素材は帝人のナノファイバーで構成されたテキスタイルを採用した。

今回のドラマで用いた「感性デバイス」は、布を巻いてさわり心地にこだわった。「触れる」という繊細な感覚が求められるからだ。

「現代のコンピューターは、キーボードやマウスだけでなく、話しかけたり触れたり、様々なものを通じて入力を行いますが、触れる対象の“素材”こそがコンピューターとの未来のインターフェイスになるのです」

“素材”に関する帝人の蓄積された知見には大きな可能性があると、渡邊さんは言う。

この先も、「感性」を伝達する技術はますます進歩し、きっと遠くない未来において、「感性」は言語と同等、あるいは言語以上に多くのものを語るようになるだろう。未来のコミュニケーションにおける「触感」の重要性を知ることができた今回のプロジェクトの可能性は、今後さらに拡がっていく。「触感」だけにとどまらず、「感性」によって、コミュニケーションはより豊かになっていくのではないか。帝人の使命は、その可能性を常に追い続けていくこと。「感性」の可能性を追求することはそのまま、人間の可能性を追い求めることだ。

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