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生物38億年の進化を、まとえないか?

人間の生活と共にある繊維や衣服が、もし劇的に進化できたら、社会自体が大きく変わるかもしれない。
生物が38億年かけて進化してきた環境適応能力を理解し、あらたなものづくりを探る。

VOL.2

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1918年、日本初のレーヨンメーカーとしてスタートした帝人。「高機能繊維のプロフェッショナル」を自認する帝人フロンティアが現在注目しているのは、繊維と暮らしの関係である。創立100周年を機に進めるTHINK HUMAN PROJECTでは、「気候がさらに変動する100年後の暮らしに欠かせない繊維のあり方」を考える。

人の暮らしは天気や気候、気温の変化に少なからず左右されている。そして人類は二足歩行を始めた頃から、その時々の環境に応じた繊維を衣服や寝具といった形で暮らしの中に取り入れてきた。これからの100年で気候はさらに変動するといわれるが、私たちはこのような環境変化に対応する新しい暮らしのヒントは生物にあると考えている。生物は人よりもさらに長期間、環境の変化にさらされ、生き残りをかけて進化してきたからである。

帝人フロンティアがバイオミメティクスに注目するのは、天然繊維への憧れから始まった帝人の繊維の歴史の表れでもある。デジタル全盛を迎える現代にあって、人間が構築してきた技術体系ではなく、38億年かけて進化を遂げ、環境に適応してきた生物に、生き残りを可能にしたノウハウやプロセスを学び、暮らしを進化させる繊維のイメージを求める。それは、創立当初と同じ憧憬を生物に抱きつつ、バイオミメティクスの研究結果を取り入れる事で、全く新しい視点から生物が構築したシステムを紐解けると考えるからである。

繊維は、生物への憧れから発展した

タッグを組むのは、バイオミメティクスの第一人者である、国立大学法人浜松医科大学光尖端医学教育研究センターの針山孝彦特任教授。針山教授との取り組みは、怪我や闘病などで「指紋が薄くなりグリップ力が落ちた」、「冷たいものに触れると痛い」、「手が震える」などの症状を訴える患者のQOL(Quality of Life)の向上に貢献するべく始まった。そして、針山教授が培ってきたバイオミメティクスの発想と知見に、帝人フロンティアの超極細繊維「ナノフロント®」の技術を融合して開発、製品化したのが、生活アシスト手袋および指サック「ナノぴた®」である。これは、「ファンデルワース力」と呼ばれる高い摩擦力を発生する、ニホンヤモリの脚先にあるナノサイズの毛束を応用したもので、超極細繊維ナノフロント®を掌側にあしらったそのグリップ力は、ペットボトルの蓋を開ける、紙をめくる、机に手をついて立つなど、生活の様々なシーンで活用されている。

ナイロンが絹糸を模倣した化学繊維であることはよく知られているが、「繊維産業はバイオミメティクス産業」といっても過言ではないほど、両者の関係は深い。
「産業革命以来、繊維の開発は工業製品と化学研究、エンジニアリングが結びついて発展してきました。けれど、これまでのような高エネルギーを使った開発を続けていては未来は立ち行かなくなることがわかっています。鉄やアルミ、希少元素を原料に、化石資源や原子力エネルギーに依存してものづくりを行う『人間の技術体系』から、太陽光や化学エネルギーを用い、分子集合や自己組織化によってものを作る『生物の技術体系』へと、考え方が大きくシフトしてきたのです」(針山教授)


あんなこともできる?
バイオミメティクスと繊維の未来

それでは「生物の技術体系」を模倣した未来の繊維はどのような形になるのだろう。

「私の考えでは、繊維に求められる機能は全て、繊維自身が有するようになります。例えば、蓮の葉のような超撥水性能がある繊維の表面構造や付与する化学物質を変えることで超親水性能を持たせたり、あるいは超撥水のパターンと超親水のパターンを組み合わせたりというように、二つの性能が備わることで一つの繊維に様々な機能を持たせることができ、そういう繊維をつくる時代になっていくと考えています。そもそも、生物は38億年前にバクテリア(原核生物)として誕生し、進化してきました。つまり全ての生物は同じ素材で作られているんです。同じ素材で作られているのだから、例えば、ある部位は親水性である部位は撥水性であるというように、個々が持つ性能を工夫できないわけがないんです。現在は織り方や化学物質の付与で多彩な機能を実現していますが、これからは繊維の表面構造で機能を強調する時代になるでしょう」

バイオミメティクスの研究では欧米に大きく水をあけられてしまっている日本だが、針山教授は「『日本の自然観』を盛り込んだバイオミメティクスを目指したい」と語る。
「日本の自然観とは『八百万の神』、つまり全てのものに魂が宿るという考え方です。これは日本人全体が共有している風土観の一つと言えるでしょう。それぞれの生物が持つ機能に対し、尊敬の念を持つ。尊敬の念を持つから、畏敬の気持ちを持ってそれを観察し、取り入れようと考える。そうした意識を抱くことで、より洗練されたものができると考えています」

天然繊維への憧れから始まった帝人。100周年を迎えた今、このTHINK HUMAN PROJECTでは「生物の技術体系」への憧れを新たにし、さらに100年後の暮らしをイメージして「そこにある繊維」の考察を始めたところだ。ここで披露されるアイデアは荒唐無稽に思えるかもしれないが、「あんなことできたらいいな」という遊び心や理想を追い続けることこそがこうした研究を加速させるのである。
次回は「100年後の繊維」をテーマにした、帝人×針山教授×エンジニアリング&デザインチーム「Takram」の三者によるコラボレーションプロジェクトを紹介しよう。

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