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テクノロジーは、人間らしさをどう変えるのか?

人工臓器、埋め込み型マイクロチップ、AI。
テクノロジーの進化によって、道具は単なる補助手段ではなく人間の機能を拡張するまでに発展してきた。
人間は、進化し続ける道具を使いこなしていけるのか。
テクノロジーが人間の限界を超えるとき。
そのときの「人間らしさ」とは。

VOL.2

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人工生命研究を行っている池上高志教授は「人間らしさ」という抽象的な概念をどう考えるのか? 普遍的な「生命らしさ」と常に変化する「人間らしさ」。個ではなく人と人との関係性を考えることの意義を語る。

体の部品は変わっていく
では、変わらない「生命らしい」意思や意識とは?

「『人間らしさ』には、普遍的な部分と、環境によってすごく変化する部分とがあると思うんです」

東京大学大学院情報学環の池上教授の言葉の通り、表層的な意味での「人間らしさ」は簡単に変わってしまう。例えば、数年前までは当たり前だった新卒一括採用や終身雇用の崩壊など、社会制度が変化することによって、人間らしさの大きな要素である「幸福」に対する考え方は大きく変化するはずだ。一方で「長生きしたい」「健康でいたい」というような生命維持に関わる意識は普遍的だ。「体の部品そのものはどんどん変わっていくと思うけど、意識状態や身体状態を維持したいというホメオスタティックなものは残っていくんじゃないかな」と池上教授は言う。
いわば『生命らしさ』こそが、人間にも共通の普遍的なものであり、池上先生の研究対象でもある。

「人工生命の研究をしていて『生命らしさ』とは何かを考えた時に、ホメオスタティックであることとか、自律性とか、さまざまなものが挙げられるけれど、その中に進化可能性もあると思うんです。親から子に伝える時に、変化する部分が一切なかったら進化もしないですよね。だから、必ず変化するっていうことを保証するような何かを作っておかなきゃいけない。変わることがなくならないような機構。それを『オープンエンドの進化』って呼んでいるんですけど、それこそがまさに人工生命研究をしているみんなが解こうとしているものですよね。オープンエンドな進化が起こせるのかどうか、まだわかっていないんです。進化って数十億年とか長い時間スケールじゃないですか。それだけの長いスケールで何が起こるかを予測したり、設計する能力って今の人間の技術にないんですが、生命を作ることは、オープンエンドな進化をデザインしたり、設計することと等価のことだと思うんです」


人間らしさをアルゴリズムだけで
立ち上げるのは無理でした

「生命らしさ」をデザインすることは、また一方では変化するはずの「人間らしさ」について考えることでもあるという。池上教授が大阪大学の石黒浩先生と共同で作った「オルタ」というアンドロイドは、見た目はロボットの部分が大きく残りながらも、現在の我々が考える「人間らしさ」を強く感じさせる。

「オルタを作った時に、『人間らしさ』をアルゴリズムだけで立ち上げるのは無理なんじゃないかと思ったんです。ロボットの中に、あるアルゴリズムを入れたら、たちどころに人間らしくなる、なんていうことは無理だと。ではどうすれば良いのかと考えた時に、人間と相互作用をさせていくと人間らしくなるんじゃないかと。意識は、伝染していく。つまり、『人間らしさ』も伝染してくるんじゃないかと考えたんです。システムの中に閉じさせるのではなくて、何かと合体して初めて完成するアルゴリズムがあるんじゃないか。特に『人間らしさ』や『生命らしさ』を作るためには、“開かれた”アルゴリズムが必要だと考えています」


個が群れから影響を受けて
動きそのものが変わっていく

「変な例ですけれど」と前置きをしつつ、意識の伝染の例として“こっくりさん”を挙げた。「誰かが意志を持って指を動かすのではなく、集団的無意識と呼ぶべきものによって指が動かされていくような、無意識が伝染しているような状態ですね。あるいは友人とディナーを食べていると、同じタイミングでワインを飲むというようなシンクロ(行為の同期)が容易に起こったりします。人は、自分たちが考えているよりも、相互作用によって生成された集団的意識に左右されている」池上教授は、そう考えている。

「集団的意識や集合知と呼ばれるものの研究は、個体だと起こらないようなことが、数をどんどん増やすことで生まれる構造を調べることだと思うんです。それは人間だけに限らない。例えば単純なルールで動く鳥の群れのシミュレーションにおいて、数千羽での群れの動きを数万羽に数を増やすことで、まったく違うものが見えてくるんです。スーパーオーガニズムと呼んでいますけれども、個が群れから影響を受けて、動きそのものが変わっていくんです。大きな群れは、小さな群れと比べて異なる揺らぎを作っていく。そこで、集団同士が影響し合う中に、生まれてくるものもある。それと同じように、『人間らしさ』も立ち上がってくるものかもしれないと思うんです。無人島で独り暮らす人の人間らしさと、街で集団として暮らしている人の『人間らしさ』は違う。『人間らしさ』は、国、人種の違い、さらにそこに技術の革新が入っていくことでガンガン変わりますよね。環境によって『何を良いと思うのか』が変化するとはそういう意味です。むしろ相互作用の仕方が、『人間らしさ』を変えていく。『人間らしさ』は、関係性の中にこそ立ち上がるものだと思うんです」

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